地下鉄のホームで。
2004年 12月 16日
'94.11.17 23:10 残業帰り。
表参道St. ボーイッシュでステキな女性がホームにへたり込んでいる。多分酔っている。(青い顔してるし) その子に冴えない格好のオジサンが清涼飲料水を手渡した。このふたりは無関係の間柄。女の子はちょっとホッとして、オジサンは優しい自分をちょっと嬉しく思っている。いい風景だな。
先週末、片づけをしている最中に本棚を少し覗いた。次に読みたい本はもう決まっていて窓際に積んであるのに、時々以前読んだ本をもう一度読みたくなる。「もの食う人びと -辺見庸-」その背表紙を見て、いつの本だっただろうかと奥付を見たら、上記の文章が書いてあった。
それは見慣れた自分の文字だったけれど、書いた記憶がない。ちょうど10年前の秋。その頃は確かもう体調が悪くなっていた時期なのに「23:10残業帰り」そう書いてある。なにやってんだ、あの頃の自分。
「体調が悪いのだから、もっと早く帰りなさい」10年前の自分にそう言った。
多分、あの頃周りにいたみんなもそう言っていたに違いない。あの頃のサハラには周りの声が聞こえなかったんだろな。耳にもココロにもそういう声が届いていなかったんだろうなぁ。
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著者: 辺見 庸
タイトル: もの食う人びと